遺言書作成の流れ

こんにちは。山口市中河原町の司法書士山本崇です。3回シリーズ最終回の今日は遺言書作成についての手続きの流れを説明いたします。

日本人はなかなか遺言書を書こうとしませんね。私自身はこういう仕事をしているのでいろいろと遺言書が身近ではありますが、私の親族や知り合いで遺言書を書いたという人はいないように思います。私も書いていません。日本人は資産家でもあるまいし遺言書なんて大げさだとか、自分の死んだときのことを今から準備するなんて縁起でもないという意識があるのかもしれません。以前も書いたようにアメリカでは遺言書の作成がごく一般的です。ヨーロッパの状況は把握していませんが、彼らの国民性を考えると日本よりは普及しているように思います。

遺言書そのものは誰の手も借りず、自分一人で作成することができます。作成にあたっては①文案を考える、②すべて自分自身で作成する自筆証書遺言なら、文案を手書きする、③公証人に作成してもらう公正証書遺言なら文案を持って公証役場に相談する。以上が遺言書作成の流れのすべてです。簡単なようですが、これがなかなか難しいのです。まず、遺言書を書くにあたってその様式が民法によって厳格に決められているので、法律に詳しくない人だと、どのように書いていいのか分からないという点があります。自筆証書遺言についても相談者様からのご依頼でその文案を考えてほしいというのは少なくありません。本来、自分だけで完結する遺言書作成が専門家を頼らないと完成させられないようになっています。公正証書遺言であれば、当然公証人の関与が必要になりますし、遺言をする人が証人2人を伴って公証役場まで出向く必要があります。

こうした煩雑さについては確かに何とかならないものかと私自身思わなくもないのですが、ある人が亡くなってその遺産をどのように分けるかについては、遺言書がない場合トラブルが起きやすいのも事実ですから、それなりに厳格な様式や手続きが取られるのはやむを得ないとも思います。とはいえ、自分で遺言書を作成する自筆証書遺言では文面をすべて遺言者本人が手書きしないといけないとなっていますが、これはお年を召した方には少々大変です。ですので、その方の名義の不動産や預貯金の口座やその残高など、その方の財産目録に関する部分についてはコピーやパソコンで作成したものなども利用できるようになりました。また、今までは自筆証書遺言に従って遺産を分けるには、必ずその方が亡くなった後に、家庭裁判所で遺言書の検認という手続きをとる必要があり、相続人の方の負担も少なくなかったのですが、自筆証書遺言を法務局に保管してもらう制度が創設され、これを利用すれば相続が発生しても家庭裁判所の検認手続きを経ずに遺産を分けることができるようになりました。ただ、自分の遺産のどの部分を誰に相続させるかとかは必ず遺言者自身が手書きしないといけませんし、遺言書の作成日は必ず確定的な日付を記載しないといけない、署名と押印が必要という部分は今まで通りです。今の時点ではこれ以上様式などを簡略化することは無理だろうなと私も思います。ただ、遺言書保管制度も創設されましたし、遺言書の作成を考えておられる方がいらっしゃったら、公正証書遺言ではなく自筆証書遺言の保管制度もご検討いただければ、より選択の幅が広がるのではないかと期待しています。

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