こんにちは。山口市のさくらばたけ事務所の司法書士山本崇です。今回も企業法務に関係のある話題について書いてみます。

ここ最近は、会社の経営者も高齢まで頑張られることが多く、なかなか世代交代が進んでいない現実があるようです。また、後継者に社長を譲るための準備、つまり事業承継について本気で取り組んでいる会社もあまり多くないようで、いざ社長の席を子どもに譲ろうとしても上手く行かなかったりします。商工会議所や銀行などで事業承継セミナー等をさかんに開催して、事業承継のお手伝いをしていたりしますが、どこまで皆さんが本気で参加されているのでしょうか。場合によっては、事業承継を簡単に考えていたために、会社を乗っ取られるといった怖いことが本当に起こってしまいます。

たとえば、代表取締役社長A、社長の奥さんB、専務取締役C、平取締役Dが株主の会社があったとします。持ち株の比率は、A:51%、B:16%、C:23%、D:10%だったとします。社長としては、親族以外のCとDを株主から追い出して自分と自分の奥さんとで会社を回して行きたい。CとDは高齢なので、C、Dに相続が発生したときに、その相続人から強制的に株を売り渡してもらえるように、相続人からの株式売渡請求権の条項を定款に置こうと考えました。定款変更は特別決議が必要ですが、AとBとで全株式の2/3以上を持っているので、定款変更は問題なくできます。あとは、(物騒な話ですが)CとDに相続が発生するのを待つだけ。

ところが、この相続人からの株式売渡請求権の落とし穴は、すべての株主について適用されます。そして、人は必ず年齢順に亡くなるとは限らないというところです。つい最近まで元気でバリバリ働いていた社長のAが突然死することもあるわけです。そうすると、常日頃Aの経営方針に不満を感じていたCあるいはDは、Aの相続人であるBに対して株式売渡請求をします。その請求は相続発生後1年以内の株主総会決議で行なうわけですが、その株主総会では売渡元となる相続人Bは議決権を行使できません。そして、株主総会では、あれよあれよというまに売渡決議が承認され、Aが持っていた51%の株式は自社株となります。自社株は株主総会では議決権を行使することのできないものですので、存在しないのと同じです。結果的に、この会社の株主構成は、パーセントを1株とするとB:16株、C:23株、D:10株となり、CとDが組めば株主総会での特別決議も可能となり、Aが創業した会社がAの親族以外のCやDの手に落ちるわけです。

これが相続クーデターというものです。

事業承継というのは、単に社長の地位を後継者に譲るというだけの簡単なものではありません。ここに書いた以外にもいろいろと気をつけなければならないことがたくさんあります。世の中の会社の社長さんで60歳を過ぎた方は、本気で事業承継対策を考えた方がいいでしょう。