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会社運営で注意する法律
こんにちは。さくらばたけ事務所の司法書士山本崇です。今回は、実際に会社を経営している方のために、普段の業務の中で気を付けていなければならない法律上の問題について考えてみます。
製造業をされている方は、製造物責任法(通称「PL法」といいます)にも気を付けなければならないのですが、PL法については、また、別の機会に書くとして、今日は人事労務管理の観点から書いてみます。
非常に規模の小さな会社や事務所だと、従業員を雇わずに、会社代表者がひとりで切り盛りしていたり、あるいは家族だけを従業員にしていたりしますが、多くの場合は、一人以上の(家族以外の)従業員を雇っていると思います。従業員を雇っている会社で一番気を付けないといけないのが、従業員の残業時間の把握です。
基本的に、残業(あるいは時間外勤務、超過勤務)というのは、厳密には、使用者(つまり社長などの役員)が、被用者(つまり従業員)に、本日は1時間の残業をしてくださいと命じる必要があるのですが、現実にはそこまでのことはせずに何となく残業している場合の方が多いでしょう。ちなみに、労働基準法などの法律には残業についての定義がありません。それが、こうした曖昧な形での残業が多くみられる原因にもなっているのでしょう。参考までに言うと、通勤時間は残業時間になりませんし、とくに残業しなければいけない事情もないのに自宅に帰りたくないがために会社に残って雑用している場合も残業とは評価されませんので残業代は出ません。また、昼休憩中の電話番や工場勤務など会社で制服の着用が義務付けられている場合の更衣時間は残業になります。
こうした従業員の残業時間を、使用者がきちんと把握して、既定の労働時間への給与だけでなく、残業時間に対応する残業手当を支給する必要があります。最近、宅配業界で大規模な未払い残業代が明らかになり、裁判にまでなったり、書類送検されたりして問題となりました。大企業でなくても、このようなことになれば会社の社会的な評価や信用はかなり傷つくことになります。それだけでも会社として大きな損害となります。また、未払いの残業代は、従業員が裁判に訴えて勝訴した場合、未払い分の残業代だけでなく、それと同額の付加金も支払わなくてはなりません。ですので、会社としては未払い分の2倍のお金を従業員に支払う必要があるのです。そういう意味でも残業代の未払いが発生しないよう会社としては十分に気を付けなければなりません。
ところで、残業代というと、時給の125%の賃金がもらえると思っている人も多いと思いますが、その割増率はあくまでも1日について8時間を超える労働時間についてです。ですので、会社の規定で1日の労働時間は朝9時から夕方5時まで(途中1時間の昼休みあり)となっていた場合、1日に7時間しか労働していませんので、この会社で1時間残業しても、通常の賃金と同じ時給分の残業代しか発生しません。1時間を超える残業をして初めて125%となるのです。また、毎日の労働時間が8時間であったとしても、1週間に40時間を超えた場合は、やはり125%の残業代を支払わなくてはなりません。例えば、1日の労働時間が途中1時間の昼休みを入れて朝9時から夕方6時までの1日8時間であっても、土曜日も通常と同じように9時から6時まで出勤しないといけない勤務形態の会社の場合、1週間の労働時間は、8時間×6日=48時間ですので、8時間分について125%の賃金を支払わなければならなくなります。
先にも述べたように、どういった場合に残業と評価され、どのような場合には残業とならないのかということや、残業時間の計算方法と残業代の割増率はかなり複雑ですので、不安に感じられる方は、一度司法書士などの法律の専門家にご相談ください。