権利証のお話

こんにちは。山口市の司法書士さくらばたけ事務所の司法書士山本崇です。台風21号が猛威をふるっておりますが、皆さんの住んでいるところではいかがでしょうか。私の自宅周辺では夜中にそこそこ風が強く吹いていましたが、それほど心配するような天気ではありませんでした。関東の方は大変な被害が出ているようですが、一刻も早く事態が収束することをお祈りいたします。

今回は、権利証についてお話してみようと思います。権利証というのはみなさんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。かつて、不動産の所有者になった場合には、この権利証が法務局から発行されていました。とはいえ、権利証という特別な証書が新たに発行されるわけではなくて、実は登記申請の際の申請書の写しです。その申請書の写しに「登記済」という大きなハンコを法務局で押して、申請人に返還されていたのです。そこには、申請の年月日や受付番号も書かれています。あと、登記の順位も書かれています。たいていの場合は、ホチキス留めで製本されていまして、そのページの境目には、やはり法務局がハンコを押していました。割り印代わりですね。その申請書の写しの最初のページから最後のページまでを全部まとめて権利証と言っていたのです。

かつては、この権利証がとても大切なもので、絶対になくしてはならないものであるかのように言われていました。不用意に他人に渡したりしてはダメ、地震や火事の際には権利証と通帳を持ち出すというようなことも言われていたり、他人の権利証を手に入れれば、それだけでその人の持つ不動産を手に入れたかのように言う人すらいましたし。

確かに、むやみやたらと全然関係のない人に権利証を見せたり渡したりというのはするべきではありませんし、できれば紛失ということもないに越したことはないのですが、実際は権利証を取られたり、紛失しただけでは特に問題となることはありません。不動産の所有名義変更のためには、不動産の所有者の実印の押印と印鑑証明書が必要なのです。ですので、権利証を盗まれ、実印と印鑑登録カードも盗まれたという極めてまれな場合でない限り心配することはありません。

では、権利証をなくした場合あるいは盗難にあった場合はどうなるのか?この場合には、きちんとそうした事態に対応できるような制度が準備されています。「本人確認情報」というものです。登記申請を代理する司法書士が、不動産の所有者と直接会い、身分証明書の提示を受けたうえで、権利証を紛失あるいは盗難したときの状況などを聞き取り、この人が権利証の真の持ち主であったと証明するのです。その証明書を「本人確認情報」として登記の際に法務局に提出することによって、権利証がなくても登記ができるのです。ですので、権利証を紛失したからといって、その不動産を売ることができない!というようなことはありません。実際、権利証を紛失されている方というのは、それなりにいらっしゃいまして、引越しをしたり、火事にあったり、なんだかんだで行方不明という方にお会いすることは決して珍しいことではありません。

とはいえ、権利証はやはり大切なものですから、普段から厳重に保管されますようお願い致します。そして、たまにはきちんと権利証があるべき場所に収まっているか確認してみてください。あの封筒の中にあるはずと思っていたら、なかったということのないように。

なお、現在では新たに権利証は発行されなくなり、その代わりに登記識別情報というものが発行されることになっています。ただ、今までに発行された権利証は今後も有効ですのでやはり大切に保管されてください。

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