権利証がないときの登記

こんにちは。山口市中河原町の司法書士山本崇です。

さて、みなさんは権利証ってどんなものか分かるでしょうか。昔は火事のときには、財布と権利証だけ持って出るなどと言ってたようで、私もなんとなく聞いたことがあります。それだけ大事なものと一般には理解されていたものです。実際、権利証は、不動産についての重要な書類であることは間違いありません。不動産を売買したり、担保に入れたりするときに必要になってきます。昔は高利貸などに借金の肩に権利証を取り上げられるということもあったと聞きます。さすがに最近はそんなことはないでしょうが。

とは言え権利証が万能かというとそういうわけでもありません。権利証さえ手に入れたらその不動産を自由自在に処分できるというわけではないです。そんなことが可能だったら権利証なんて怖くてとても自宅の押し入れになんか入れて置けません。銀行の貸金庫にでも預けないと安心して夜も眠れなくなりそうです。

逆に、権利証がなくても不動産を処分することは可能です。例えば昭和20年代などに相続で土地を譲り受けて、それ以来ずっとその土地を持ち続けているという方にたまに出会いますが、この場合は昭和20年代の相続のときに権利証が作られてるので、基本的にはその権利証をもって土地の売買などを行います。とは言え、70年前後も前の権利証なんて紛失していることもよくあります。では、そうした場合には、どうやってその土地を売買したらいいのでしょうか。これには3通りのやり方があります。

まず1つ目は、売買のときの登記を担当する司法書士に売主さんの本人確認情報を作成してもらうというもの。司法書士が売主さんと直接面談して、身分証明書の提示を受けながら、その面談の状況や、権利証を紛失したいきさつ、不動産を売買するに至った経緯などを聞き取り、報告書にまとめて法務局に報告することになります。権利証を紛失した場合の一番メジャーなやり方だと思います。ただ、この本人確認情報を利用する手続きは、一つデメリットがあって、本人確認情報を作成する司法書士に作成料のような費用を支払わないといけないという点です。

その次の方法として、事前通知という手続きを利用するやり方があります。これは権利証を持たずに売買などの登記申請を法務局にした場合に、法務局からその不動産の所有者宛に、今回こういう登記申請がされたが間違いないかという問い合わせの書面が本人限定受取郵便で届くというもので、それに返信しない限り登記は完了しません。本人限定受取郵便は、たとえ家族であっても本人の代わりに受け取ることができないので、かなり慎重に本人性を確認できます。ただ、一般にはなじみの薄い種類の郵便なので、お年寄りの方はその重要性が分からず返信をしなかったりということも起こりやすいので、登記申請する際は事前にそのことをよく伝えるようにしておきます。先日、私もこの事前通知を利用した登記を申請したのですが、売主の方が非常に多忙な方で郵便を受け取りはしたけど、返信をするのを忘れており、やむなく申請を取り下げることとなりました。こういうことがあるので、売買の登記と同時に、銀行から融資を受けて抵当権を設定しないといけないような登記の際にはこのやり方は使えません。

最後に公証人の認証を受けるという方法もあります。不動産の売主などの義務者の方が、登記委任状あるいは申請書に署名捺印したものを公証役場に持ち込み、公証人から本人の署名捺印に間違いないと認証を受けるやり方です。このやり方も一応法律上規定されてはいますが、かなりのレアケースです。一体どういったときにこのやり方が利用されるのか正直想像がつきません。もちろん、私はこのやり方での申請の代理人になったことはありません。もし、経験のある方がいらっしゃったら教えてください。

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