司法書士から見た財産管理の方法

任意後見契約と家族信託

こんにちは。山口市中河原町の司法書士さくらばたけ事務所の司法書士山本崇です。今日は下関出張してきました。

少し以前からお話をいただいていたのですが、ご相談者さんのお義母さんがご高齢で割りと多額の預金資産をお持ちの方がいらっしゃいまして、そのお義母さんは今は施設に入っているとはいえお元気ですが、若干認知症の兆候が見られ、今後その症状が進行していった場合には、その方がお持ちの預金等はいっさい引き出しができずになって、いわば塩漬け状態となってしまいます。そのお義母さんにはお子さんがお二人(そのうちの娘さんがご相談者さんの奥様です)いらっしゃり、またお孫さんは全部で4人いらっしゃる。お義母さん自身はそのご家族・ご親族のために自分の預金を活用して欲しいとのご希望をお持ちです。そうした背景があり、ご相談者さんは「家族信託」というのが有効ではないかと考え、家族信託をして欲しいと最初私のところをたずねられました。

確かに、多くの資産をお持ちのご高齢者さんについて財産管理の方法として、家族信託は有効な手段であることは確かです。私も当初、今回のご相談で家族信託を利用したスキームを検討しました。ただ、ご相談者の方ができるだけ税金の負担を抑えたいというご希望をもたれておられました。そうすると、ご相談者さまのお義母さまを委託者兼受託者とするほかなく、そうした場合に、お義母さまの預金資産を、お義母さまがご存命中に他のご家族のために活用することがかなり難しくなります。さらに税金を極力抑えるとなると、ほぼ活用方法はありません。そこで、ご相談者さまと何度かお会いしてお話させていただいている中で、任意後見制度と任意代理を活用する方法を提案してみました。お義母さまが元気である間は任意代理人が、そしてお義母さまの認知症が進行した後は任意後見人が、そのときどきの資産状況を鑑みて、ご家族のために一定程度の贈与をすることができる代理権を付与しておけば、ご家族のためにお義母さまの資産を活用させることができますし、1年間に110万円以下の贈与に抑えれば、贈与税もかかりません。それらの説明をさせていただいたところ、ご相談者さまも納得され、そのスキームでお願いしますと話はまとまりました。

お義母さまの健康状態を確認するために下関へ

そこで、実際に任意代理契約と任意後見契約の契約当事者のお一人となられるお義母さまと面談するために、お義母さまが暮らされてる下関の高齢者福祉施設に出かけることとし、昨日行ってまいりました。これは、契約の当事者となられるお義母さまに挨拶をさせていただくという意味ももちろんありますが、一番私が気をつけたのはお義母さまに契約締結能力があるかどうかの把握です。相談者さまとお話をさせていただいた中で、お義母さまには認知症の兆候が見られるという話がありましたので、万一判断能力が不十分で契約締結の能力がないとなりますと、そもそも今回のスキームはいっさい利用できなくなります。そういう意味で、今回の下関出張は絶対に必要でしたし、任意代理契約と任意後見契約のお話を具体的に進めるに先立って行なう必要がありました。

今回約1年ぶりくらいで下関に行くこととなりました。施設にご相談者さまやそのご親族の方たちと訪問し、お義母さまと少しお話をさせていただくことができましたが、想像以上にしっかりとされておられました。ご自身の氏名や生年月日はもちろん、生い立ちや家族関係等もしっかりと受け答えができ、ご自身が今置かれている状況、ご自身の資産の把握やその活用についてのご希望までもしっかりとお答えいただくことができ、最終的にこれならば間違いなく契約当事者となれると太鼓判を押すことができました。お義母さまとの面談後、近くの喫茶店にご相談者さまとお義母さまの息子さん(ご相談者さまから見て義理の兄に当たる方)と少しお話させていただきました。その際に、私のほうから今回契約を締結するには何ら問題ないということをお伝えし、お二人からはそれではお願いしますと正式にご依頼をいただきました。

今回、ご相談者さまは前々からご高齢者の方の財産管理の方法について関心を持たれていろいろと勉強されていました。ですので、最初は家族信託でという話でしたが、今回のように資産のほとんどが現預金で、さらに財産管理や活用に当たって極力税金を抑えたいとなるとやはり家族信託では限界があると感じます。家族信託はたしかに財産管理の方法として有効な手段のひとつではありますが、決して節税効果のあるものではありません(特定障害者信託の場合は別ですが)。いっさい税金を払いたくないとなると、やはり信託以外の別の方法を検討しなければならなくなります。今回はそうした中で任意代理契約と任意後見契約の併用といった形に落ち着いたわけです。