相続か贈与か

こんにちは。山口市役所近くの司法書士山本崇です。

司法書士という仕事は、相続が発生したときに相続手続きをすることが多いということもあって、相続についての相談を受けることがよくあります。実際にどなたかが亡くなって相続が発生したという相談も多いですが、この場合は粛々と手続きを進めるしかありません。不動産であれば相続による名義変更、預貯金であれば解約、保険金は請求といろいろです。当然この時に遺言書があれば遺言書通りに各種手続きをすすめますし、遺言書がなくて遺産分割協議を行った場合は遺産分割協議の内容に従った手続きを取ります。

これとは違ってご自身に万一のことがあった場合に備えて、将来の相続を事前に対策したいというご相談もそれなりにいただきます。ここ最近立て続けにあったのは、相続での手続きを待つのではなくて、不動産を今のうちにお子様などの相続人の方に贈与したいというご相談です。相続まで待つと原則相続人全員の実印をもらわないといろいろな手続きができませんから自分の子どものうちの一人にあげたいというような場合は生前に贈与するというやり方もあります。贈与であれば贈る側と受ける側の意見が一致すれば自由にできますから、将来相続人となる可能性のある他の人の意見は無視してもいいことになります。その他場合によっては税金の上でも生前に贈与するとお得になることもあると思いますが、こちらについては税理士さんとかの得意分野で私は詳しくないので省略します。とにかく、贈与であれば贈る側と受ける側の2者の合意だけで済むのでいろいろとやりやすいのですが、一つだけ注意しないといけないのは抵当権の存在です。銀行などからの融資を受けて家を購入するとその家や家が建っている土地に必ず抵当権の登記がされるのですが、抵当権がついていてさらにローンの残債がある状態で不動産を贈与してしまうと銀行などから怒られてしまいます。ほとんどの場合住宅ローンを組む段階で、残債がある状態で不動産を譲渡してはいけないという条件付きの融資を受けているからです。登記手続き上は、抵当権がついていようが、残債があろうが不動産を別の人の名義に変えることはできるのですがそれを代理して登記してくれる司法書士はいないでしょう。ですので、ご自身の不動産の生前贈与などを考えているときはとりあえず登記簿を確認してください。

ご自身の不動産に抵当権がついたままでも、実際はローンをすべて返済しているとか贈与(あるいは売買)するタイミングで残債を一括返済するという場合は、銀行の方も承諾してくれますので、そういった不動産をお持ちの場合は借り入れをした銀行などへご相談ください。私たち司法書士へご相談に来られるのでもとりあえずは問題ありません。

不動産に抵当権がついていて残債もあり、残債を一括返済するのは難しいとなれば生前贈与は無理ですので、その他の方法をとります。相続まで何も手を打たなければご自身の死後に相続人全員の実印が必要になりますので、一番いい方法としては遺言書を書きます。遺言書を書いてもすぐに不動産の名義を変えることができるわけではないですが、将来相続が発生しても遺言書の内容通りの手続きができるのでご自身の意に反した相続手続きとなることはありません。

とにかく相続で揉めないためには生前に対策をすることが重要です。遺言書だけでなく家族信託や任意後見契約などいくつかの方法がありますので、ご自身の亡き後についてご心配があるようでしたら早めに専門家にご相談ください。

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