法定相続情報一覧図の注意点

こんにちは。山口市役所近くで司法書士をしている山本崇です。

私たちの事務所では相続登記など相続のご依頼をいただいた場合は、基本的に法定相続情報一覧図というものを作成しています。この法定相続情報一覧図は、4,5年くらい前に運用が開始された法定相続情報証明制度に基づくもので、ある方が亡くなった場合に、誰がその方の相続人になるかを証明した一覧図です。見た目は亡くなった方(被相続人)を中心とした家系図のようになっています。末尾に、法務局の登記官の認証文と公印があり被相続人の相続関係を公の機関が証明している体裁となっています。まだ一般の方にはあまり知られていないように思います。

この一覧図があると何かいいことがあるのかよく分からないかも知れませんが、ふつう相続登記や相続に伴う預金の解約などを相続人の方が行う場合は、法務局や金融機関、保険会社などに被相続人の出生から死亡までの戸籍一式と、相続人全員の最新の戸籍などを提出しないといけません。子どもが多い方であったり、被相続人の直接の相続人についてさらに相続が発生していたりすると戸籍だけでもかなりの分量になります。それをA銀行での解約の手続きで提出して解約ができてから戸籍を返却してもらってB銀行で解約、さらにその手続きが終わって法務局で相続登記・・・というように1つ1つの手続きを終わらせないと次の手続きに移れません。これだと銀行などの口座がたくさんある方やあちこちの自治体に不動産を持っている方のように相続の手続きがたくさん必要な方は手続き開始からすべての手続きが終了するまでにかなりの時間がかかってしまいます。もちろん、戸籍謄本などをそれぞれ2部ずつとか3部ずつ取得していればいいのですが、戸籍謄本は1通あたり450円から750円の交付手数料が必要ですから、3部も準備すると1万円を超えることも少なくないでしょう。そういった煩雑さや費用の問題を解決するのが、この法定相続情報一覧図です。

法定相続情報一覧図は、相続人の方が自分で作成した一覧図に上記の戸籍一式を付けて法務局に申し出れば無料で何通でも作成してもらえます。通常は司法書士などが相続人の方からご依頼をいただいて代理で申し出をします。もちろん戸籍はあとできちんと返却してもらえます。相続関係を法務局が証明したものが何通も手に入るので複数の金融機関や法務局での手続きを同時並行的に進めることができるのです。ですので、特段一覧図は必要ありませんとおっしゃる方を除いては基本的に私たちが代理して一覧図を法務局に証明してもらうようにしているのです。そのために別途費用をいただくこともありませんし、ある種のお客様サービスです。そもそも相続登記は法務局で手続きをしますので、そのついでというと語弊がありますが、相続登記の一環として申し出をしているという印象です。

で、この一覧図の申し出を法務局に行うにあたり注意しないといけないのが、相続登記と一緒に申し出を行うかどうかです。相続登記と一緒に行うか申し出のみを単体で行うかで少し手続きの方法が変わるところがあるのです。まず、亡くなった方の戸籍を集める範囲です。申し出のみを行うときは、亡くなった方つまり被相続人の方の出生から死亡までの戸籍をすべてそろえる必要がありますが、相続登記と同時に申し出をする場合は、被相続人の方が10歳程度になってから死亡までの戸籍で大丈夫です。被相続人の方の幼いころの異動が記載されている戸籍は不要です。明治初期の戸籍は収集が困難なことも少なくないのでこれが意外と便利です。

また、申出人の住所が分かる免許証などのコピーを提出する必要がありますが、これは申し出のみを単体で行う場合は、代理人が申請するときもそのコピーに「原本と相違ありません」と記載したうえで相続人(申出人)の方の記名・押印が必要となります。ただし、相続登記と同時にするときは、住民票のコピーに「原本と相違ありません」と記載したうえで、登記を代理申請している司法書士の名前を記名・押印すればよく、わざわざ依頼者様に署名などをしていただく必要がありません。

このように見てくると一覧図証明の申し出は、相続登記と一緒にやった方が断然便利だとも思えるのですが、必ずしもそうとは言えず先に一覧図の申し出をした上で登記や預金口座の解約手続きをすることもあります。ケースバイケースですね。ですから、申し出と登記を一緒に行うかどうかは意識しておかないと後で法務局から補正の指示を受けることがあるので割と気を使いますね。ちなみに、相続人ではあるけど申出人ではない方の住所を証明する住民票などはコピーをつける必要はありません。原本を提出すれば後できちんと返却してもらえます。

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