根抵当権の債務者破産の場合

こんにちは。山口市パークロード近くで司法書士をしております山本です。今日の山口は朝から雨が降っていてとても寒いです。風邪をひかないように気をつけねば!

ところで、少し前にやった登記なのですが、根抵当権の元本確定登記について少し書いてみたいと思います。私は正直なところ元本確定登記をするのはこの時が初めてでした。まず最初に、どういったときに根抵当権の元本が確定するのかまとめておきます。

1. 元本の確定期日が到来した場合

2. 根抵当権者または債務者について相続が発生したときに、相続開始後6ヶ月以内に指定根抵当権者または指定債務者の合意の登記をしなかった場合

3. 根抵当権者または債務者について合併があったときに、根抵当権設定者が確定請求をした場合

4. 元本確定期日が定められていないときに、根抵当権の設定者が確定請求をした場合

5. 元本確定期日が定めれらていないときに、根抵当権者が確定請求をした場合

6. 根抵当権者が抵当不動産について競売等を申し立てた場合

7. 根抵当権者により抵当不動産に対し滞納処分による差押えがされた場合

8. 第三者の申し立てにより抵当不動産に対して競売手続きの開始等があった場合

9. 債務者または設定者が破産手続開始決定を受けた場合

今回、私が確定登記をしたのは、上記の9のパターンに当てはまったからです。この時の根抵当権者は、とある銀行さんで、債務者は地元の会社でした。債務者である会社については破産手続開始決定を受けたのですが、そうすると債務者は借入金を債権者の銀行に返せなくなるため、銀行は債務者に代わって保証会社から債権相当額を保証してもらえます。そうすると保証会社としては債務者の代わりに銀行に支払った保証金を債務者から取り立てるために、銀行さん名義の根抵当権を譲り受ける必要があります。このとき、代位弁済を原因とする根抵当権移転登記をすることになりますが、この登記をするためには根抵当権の元本が確定していなければなりません。今回、債務者は破産開始決定を受けているので現実には元本は確定しているのですが、登記簿上では元本が確定しているかどうかが分かりませんから、根抵当権移転の前提として元本確定登記をする必要があるのです。

元本確定登記は、権利者を根抵当権者、義務者を根抵当権設定者として共同申請するのが原則ですが、会社・法人である債務者が破産したときの確定登記は、根抵当権者単独でおこなうことができます。この場合、登記原因証明情報としては、債務者である会社・法人について破産手続開始決定を受けたことが分かる会社の登記簿になり、登記済証(権利証)あるいは登記識別情報は不要となります。また、単独申請ですので委任状も根抵当権者のものだけで大丈夫です。当然、根抵当権設定者の印鑑証明書も不要です。なにしろ、設定者は登記申請に関わることがないため、委任状等に設定者の実印を押すことがないので印鑑証明書を添付する意味がありませんから。

ただ、ここでは私はスラスラと手続きの流れを書いていますが、何しろ元本確定登記をするのが初めてでしたので、実際に依頼を受けてからはいろいろ調べたりして、結構大変でした。根抵当権の元本確定についての細かい規定についても司法書士試験以来まったく見返すことがなかったため、完全に忘れていましたね。でも、この依頼を受けたおかげで一通り頭の中で整理することができました。次に同じような依頼があったときはスムーズにお客様に手続きの案内をすることができるのではないかと思っています。

ちなみに、本の宣伝をするつもりはないのですが、根抵当権に関する登記については、青山修著『根抵当権の法律と登記』が詳しいので、司法書士などの専門家の方でまだお持ちでない方がいらっしゃったら購入しておかれることをお勧めいたします。

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