抵当権抹消の登記原因

こんにちは。山口市役所近くで司法書士事務所を開いている山本です。

事務員さんと話をしていてふと気づいたので、抵当権抹消の登記原因について書いてみようと思います。抵当権を抹消するときの登記原因としては、基本的に「〇年〇月〇日弁済」であるか「〇年〇月〇日解除」となります。原則としては登記原因証明情報に「弁済」と書いてあるか「解除」と書いてあるかによって、弁済か解除かが決まるのですが、どういうときに弁済となって、どういうときに解除になるのでしょうか。「弁済」というのは返済と同じ意味で、抵当権の債権を全部返し終わったときのことです。たとえば、銀行で住宅ローンを組んで家を購入すると、その家に「〇年〇月〇日金銭消費貸借同日設定」という登記原因で抵当権が設定されます。このときの金銭消費貸借が住宅ローンで、それ(住宅ローン)を全部返し終わって返済がすむと「〇年〇月〇日弁済」となります。ところが、抵当権によっては設定したときの登記原因が「〇年〇月〇日保証委託契約に基づく求償債権同日設定」というものもあります。この登記原因がどういうときに使われるかというと、たとえばある人が銀行で住宅ローンを組んで家を買ったとします。このとき家を購入した人と銀行の間では金銭消費貸借契約が締結されています。ですので、銀行が直接抵当権を設定するときは「〇年〇月〇日金銭消費貸借同日設定」となります。もっとも必ず「同日」設定であるわけではないですが。しかし、割とよくあるのですが、住宅ローンを組んだときの銀行などの金融機関が抵当権を設定せずに、その金融機関の関連会社である保証会社が抵当権を設定し登記をすることもあります。なぜそうするのかは想像でしかないのですが、万一、住宅ローンを返済できなくなったときは抵当権者である銀行などが不動産を差し押さえて競売にかけ、競売の代金から債権を回収することになります。しかし、銀行の本業はお金を貸して、その後借主からお金を返してもらうことであって、差し押さえとか競売なんかは銀行の本来の業務ではないわけです。それに銀行が差し押さえとか競売とかするとその銀行のイメージが悪くなるというのもあって自分たちでは抵当権を設定せずにその債権を関連会社の保証会社に保証してもらうのです。こうしておけば、住宅ローンを返してもらえなくなったときでも差し押さえなどする必要なく、債権は保証会社が立て替えてくれます。あとは保証会社が差し押さえたり競売したりすればいいわけです。そうすると今度は保証会社が事前に(もともとの銀行が住宅ローンを組んだときに)に抵当権を設定することになるわけですが、この時点では保証会社は家を購入した人にお金を貸したわけでもないし、銀行の住宅ローンを立て替えて払ったわけでもないので登記原因として「〇年〇月〇日金銭消費貸借」とならず「〇年〇月〇日保証委託契約に基づく求償債権」となるわけです。求償債権というのは将来保証会社が住宅ローンを立て替えたときに現実の債権となるもので、その時点では住宅を購入した人と保証会社との間では何の債権債務関係もありません。このままローンを組んだ人が順調に返済していってすべてを完済すると銀行としては債権を「弁済」してもらったことになり、保証会社としては将来債権となる可能性のあった求償債権が実現しなかっただけとなります。そうすると保証会社が設定した「〇年〇月〇日保証委託契約に基づく求償債権」という登記原因の抵当権を抹消するときに「〇年〇月〇日解除」という登記原因を使います。保証会社としては住宅ローンを組んだ人からは一円もお金をもらっていないので「弁済」とはなりません。私は司法書士になったばかりのころ、この「弁済」と「解除」はどう違うんだろうと悩んだものですが、基本の考え方は今書いた通りです。お金を返してもらったかどうか。もちろん、お金を返してもらった立場の銀行でも、ローンの完済時に登記原因証明情報として「解除」と書かれたものを発行するときがあるのでその場合は「解除」を登記原因とするしかないのですが。

いかがでしょうか。登記原因というのもじっくりと考えてみるとなかなか奥が深いものです。なお、以前抵当権を抹消するときに「〇年〇月〇日除権決定」という登記原因を使ったことがありますが、その話はまた今度。

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