仮登記とは?

こんにちは。山口市役所ちかくで司法書士をしている山本崇です。今年は梅雨の時期にほとんど雨が降らなかったために、これから本格的な夏を迎えて水不足が深刻になるのではないかと気になっていましたが、先日の3連休の間にまとまった雨が降ったためにこれまでの水不足が一気に解消された感があります。18日月曜日に大雨が降る中30分くらい外を歩かないといけないことがありましたが、歩道の一部は川のようになっているところもありました。ほかのところはよく分かりませんが、山口県ではこの大雨による被害もほとんどなかったようでほっとしています。さて、今日は仮登記について説明します。というのも先日仮登記についてのご依頼をいただいたためです。

不動産の登記についてはいくつかの基準で分類することができるのですが、仮登記もその一つです。不動産の登記は、仮登記と本登記、この2種類に分けることができます。私がおこなっている登記はふつう本登記です。相続登記や抵当権の設定や抹消、売買や贈与による所有権移転など基本的にすべて本登記でおこなっています。これに対して仮登記とはなにかというと、たとえば売買による所有権移転登記を行おうとするときは必ず権利証(登記済証あるいは登記識別情報)が必要となります。ただし、何らかの事情により今は権利証を準備できないけど、いずれは必ず準備できるということがあります。また、農地を売買で所有権移転するときは農地法の許可証が必要です。農地法の許可証を取得するには申請してからおおよそ1か月くらいの期間が必要です。そんなに待っていられない、1か月も後に登記をして、その土地がほかの誰かの手に渡ってしまうと困るなどという場合もあります。このように本来の登記(本登記)をするための書類などの一部が準備できないけど、とりあえずそれ以外は準備できているので何とか登記をしておきたいというのが仮登記です。

不動産登記は登記をした順番がとても重要です。たとえば、ある一つの土地について、A銀行とB銀行が同じ日に抵当権を設定したとします。それぞれの抵当権の債権額は1000万円。同じ日に登記申請をすることになりますが、A銀行が先に登記申請をし、その次にB銀行が登記申請をすると、登記簿上では、A銀行の抵当権が上に表示され、その下にB銀行の抵当権が表示されます。そして、万一債務者が債務を返済できなくなってしまった場合、その土地を強制競売します。競落価格が1500万円だった場合、まず登記簿上で先(上)に投棄されている抵当権の抵当権者であるA銀行に満額の1000万円が充当されます。B銀行はA銀行よりも後(下)に抵当権が表示されていますので、競落価格からA銀行が受け取った1000万円を差し引いた500万円しか受け取ることができません。こうなるとB銀行としては貸した1000万円のうち半分しか回収できないわけです。

ですので、不動産登記では登記の順番、順位が非常に重要で可能な限り早く登記をしておきたいという心理が働きます。でも、登記(本登記)に必要な書類の一部が準備できないというときに、とりあえず順位を確保するために行うのが仮登記です。仮登記申請をすると、登記簿上に仮登記というものが表示され、その下に余白が設けられます。この余白には、それよりも後に何かほかの登記をした時にも埋められることはありません。そして、1か月後といわず1年後だろうが10年後だろうが、仮登記をした人たちがすべての書類を準備できたら本登記の申請をすれば、この余白が埋められて完全な登記となり、その下に登記がされていたとしても優先順位をもらうことができるのです。ある意味、法務局がフライングでの登記申請を認めているようなものですね。

こんな仮登記なんか廃止して、どんな登記であろうとすべての書類が準備できないと一切登記申請できないというようにしてもいいかなとも思うのですが、わざわざ仮登記という制度が設けられているからにはそれなりの理由と需要があるのでしょう。

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