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相続土地国庫帰属制度の現地調査
こんにちは。山口市役所近くの司法書士山本崇です。今日はずいぶんと寒いですね。これが昨日でなくて本当に良かったです。というのも、昨日はほぼ1日、外で仕事をしていましたから。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、今年の4月27日から「相続土地国庫帰属制度」というのもがスタートしました。この制度については、以前このブログの中で紹介したかも知れませんが、相続した土地(建物はダメです)を国庫に帰属させる、つまり早い話が、相続で手にした土地を国にあげるという制度です。いつ相続したかは問いません。この制度が始まった4月27日以降に相続で取得した土地でもいいですし、50年前に相続で取得した土地でも問題ありません。どうしてこういう制度ができたのかというと、簡単に言うと所有者の分からない土地をこれ以上増やさないためです。少し古いですが、平成28年の時点では、相続登記などが適切にされていないため、所有者の分からない土地が九州本島と同じ程度の面積あることが分かっています。これをこのまま放置しているとさらに所有者の分からない土地が増えてしまいます。相続登記の義務化もその対策の一つですが、土地を相続したくないという方もいらっしゃるでしょうから、そういう人のために作られた制度です。もちろん、相続放棄の手続きをすれば、この制度と同じように土地を相続しなくて済みますが、相続放棄の場合は、土地だけでなく建物、預貯金など、亡くなられた方の財産をすべて相続することができなくなりますので、預貯金等がたくさんある場合には不向きです。一方、その相続土地国庫帰属制度の場合は、建物は対象としていませんが、土地であれば、特定の土地のみを国に引き渡すということもできます。たとえば、都会にある土地と地方の中山間地域にある土地を同じ人から相続した場合には、都会の土地は相続し、地方にある土地は国に引き渡すということも可能です。
こう書くと、とても便利な制度であるように思えますが実際にはかなりハードルが高い制度でもあります。例えば、建物が建っている土地はダメですし、境界線のはっきりしない土地も申請が認められません。また、手入れの行き届いていない山についてもこうした制度の利用はできません。ですので、山林などは特に申請のハードルが上がります。
今回私が申請することとなったのは、こうしたものに該当しないところです。ただ、申請をするにもいろいろと準備が必要で、とくに重要なのがどこが境界なのかを示した図面と写真です。ですので、この制度を利用して申請するには現地調査が必須となります。今回の対象となった土地は山口市内から車で40分程度山間部に行ったところにある、田、畑などです。まずは、どんな感じのところなのか現地を確認しようと思い、数週間前に2度ほど現地確認に行きました。ある程度開けた場所にある田などは水路やあぜ道で区切られているため境界がはっきりとしているのですが、山の近くにある石垣を組んだ田や畑は境界線がはっきりと分からないところも多く、大丈夫だろうかと不安でした。
とはいえ、その土地の所有者さんに実際に境界線がどこにあるのかを聞かずに勝手にこちらで境界線を決めて申請するわけにもいかないので、下準備もできた昨日、土地の所有者さんと一緒に現地調査に行ってきました。所有者さんはそれらの土地のすぐ近くに住んでいて、普段からある程度その土地の管理もしているとのことで、一つ一つの土地の境界をきちんと指摘してくださいました。隣の土地の所有者さんがいらっしゃるところはお隣さんとも一緒に確認してもらいました。若干、境界線があやふやなところもありますが、申請後の補正で対応できそうな範囲でした。
全部で8か所を回って確認しましたが、何とか申請が認められるのではないかなと考えています。
なお、この制度の使いづらいところとして、負担金がとても大きいということも書いておかないといけません。まず、土地一つについて申請手数料14000円が必要で、申請後に承認を受けた場合でも土地一つについて最低でも20万円の負担金が必要となり、おおむね土地が広くなれば広くなるほど負担金は大きくなります。そして、申請後が認められた後に、この負担金を期限内に支払わなければ承認が取り消されてしまいます。ですので、広大な土地(原野や山林、田んぼなど)をお持ちの方はその点も気を付けられてください。
不明なところはまず司法書士に相談されるといいでしょう。