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法定相続情報証明制度のススメ
おはようございます。山口市中河原町の司法書士山本崇です。今回は法務局で取ることのできる手続きのうち、あまり利用されていない、あるいは知られていない手続きについてご紹介いたします。
法定相続情報証明制度というのをご存じでしょうか。平成29年5月からスタートした制度なのですが、簡単に言うと、ある人が死亡したときにその相続人となる人の住所、氏名、生年月日等を法務局が証明してくれる制度です。たとえば、ある人が死亡した場合、その相続人となる人はその配偶者と2人の子どもで、それぞれの住所、氏名等はこうなってますよ。あるいは、その人の相続人は、配偶者と3人の兄弟で、それぞれの住所、氏名等はこうです、と法務局が証明するのです。この制度を利用すると法務局から法定相続情報一覧図というものがもらえるのですが、これは簡単に言うと亡くなった方とその相続人との関係を表した家系図のようなものです。必要に応じて複数枚交付してもらえますし、手続き費用や発行手数料は一切かかりませんから、かなりお得です。
通常、相続の手続きには亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本一式と、相続人の方の戸籍が必要です。そしてそれらの戸籍一式を不動産の名義変更なら法務局、預貯金の解約なら銀行や信用金庫、年金の手続きであれば日本年金機構の事務所など相続の手続きをするところにそれぞれ提出しなければなりません。たとえば法務局、銀行、年金機構と3か所で相続の手続きをしようとすると、まず法務局で手続きを行い、それが終わって戸籍を返却してもらってから次に銀行で手続し、それが終わってからさらに年金機構で手続きというふうに一つ一つの手続きを終わらせないと次の手続きに移れません。もちろん、戸籍一式を3部準備すれば同時に3か所で手続きはできますが、戸籍は交付手数料が必要で、場合によってはすべての戸籍を揃えるのに1万円を超える手数料が必要となることもありますから、好きなだけ取るというわけにもいきません。
その点、法定相続情報証明制度では、利用するにあたって、亡くなった方や相続人の方の戸籍一式をそろえないといけないのは同じなのですが、その後法務局から発行される法定相続情報一覧図を必要な枚数取得すれば、戸籍一式の代わりにこの一覧図を相続手続きをするところに提出し同時に手続きが取れます。しかも先に言いましたように一覧図を何枚取得しても無料。とても便利です。この一覧図は法務局での相続手続き以外に、金融機関での預貯金解約、証券会社、日本年金機構、税務署、保険会社など多くのところで利用できます。民間企業などでの相続手続きではまだこの制度が知られてなくて利用を断られることもあるかも知れませんが、制度の趣旨やその内容について丁寧に説明すればおそらく対応しておらえると思います。ようするに相続の手続きで戸籍一式に代わってこの一覧図を利用できないところはないと言えます。
ただ、残念なのはこの法定相続情報証明制度は私の感覚では、あまり利用されているようには思えないというところです。制度開始からすでに4年近く経ちますが、この制度を利用したいので手続きをお願いしますというお客様に出会ったのは今のところお二方のみです。もちろん、司法書士などの専門家にお願いせずに相続人の方が自分で手続きをしているのかも知れませんが、不動産の相続手続きをする際に一緒に司法書士にお願いすればいいわけですし、さすがにかなり面倒な不動産の相続手続きを相続人の方が自分でされているとも思えません。かといって相続登記手続きは司法書士にお願いして法定相続情報証明制度はご自身でされるという面倒なことをする人もあまりいないでしょうから、司法書士である私のところにほとんど利用がないということは、そもそもそれほど利用されていない制度なのだと思います。
これには法務局や法務省、また司法書士業界などによる宣伝が十分でないということが理由の一つとしてあると思います。もちろん制度創設からまだそれほど時間が経っていないために知られていないということもあるでしょうが、それでも私たちとしてももっとお客様にこの制度をお知らせし、また利用を促していく必要があるなと最近通関いたします。法務局で扱う手続きですので、どなたかご親族の方が亡くなられたときは、相続手続きを開始するにあたってまず司法書士に相談し、その中で法定相続情報証明制度を利用したい旨お伝えください。私たちとしても積極的にすすめていこうと思います。