根抵当権の債務者に相続が発生したとき①

こんにちは。山口市中河原町の司法書士山本です。今日は根抵当権の債務者の相続について書いてみます。

根抵当権の債務者に相続が発生したときは、普通の抵当権とは違った手続きが必要になります。根抵当権ではない普通の抵当権については、債務者に相続が発生しても特別に登記手続きは必要ありません。たとえば、山口太郎さんが債務者となっている抵当権があった場合に、山口太郎さんが亡くなると抵当権の債務は太郎さんの法定相続人が返済しないといけなくなるだけですべて返済し終えると抵当権を登記簿から消す手続きをとらなくても何の役にも立たない抵当権がくっついているだけとなります。通常は不動産にくっついてる抵当権は住宅ローンについてのものですから、太郎さんが住宅を購入したときの費用をお子さんなんかが返していかないといけません。もちろん太郎さんが生前ローンをすべて返済していれば相続人としては何も義務を負いませんし、ローンの残債があったとしても通常は団信というものがあって、死亡保険金で一度に返済できるので相続人が返済する義務を負いません。

しかし、根抵当権は普通抵当と違い会社など経済活動を永続している人(あるいは法人)が、その経済活動において必要となる資金をまかなうために設定される担保権で、債権債務が発生と消滅を繰り返すのがふつうです。簡単にいえば、金融機関のカードローンのようなものです。カードローンはそのための契約をして専用のカードを作れば、必要なときに金融機関のATMからお金を引き出して、契約者の口座から毎月一定額を返済しますし、資金に余裕があるときはカードを利用してまとまった金額を返済することもできます。これも一つの根抵当取引です。一般個人の場合はこうしたカードローンなんかで間に合いますが、会社などの事業者の場合は一度に必要となる額も返済の額も大きいので、いちいちカードローンを使っての借り入れ返済は現実的ではありません。そういう場合に利用するのが根抵当取引であって、そのときの債務を担保するために使われるのが根抵当権です。繰り返し使えるので、住宅ローンのように一度きりの借り入れに使われる抵当権とは違ってかなり長いこと不動産にくっついたままであることになります。

通常根抵当権は会社などが自社の不動産に設定することとなり債務者も会社自身であることが多いので、債務者に」相続が発生するという事はないのですが、アパート経営をしている個人が利用することもあります。アパートの大家さんは自分が持っているアパートの改修工事などが定期的に必要になるので、一度にまとまったお金を必要としています。そのたびごとに金融機関でローンの申し込みをするのは煩雑なので最初に根抵当取引の契約をしたうえで、そのアパートの建物と敷地に根抵当権を設定するのです。そうすると根抵当権の債務者のその個人となりますので、債務者に相続が発生することがありえます。

そのようにして根抵当権の債務者に相続が発生した場合にどのような手続きが必要になるかというのが、今回のテーマなのですが、ここまででもかなり長くなったので、この続きについては次回書きたいと思います。

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