所有者不明土地家屋管理制度(その1)

こんにちは。山口市役所近くで司法書士をしている山本です。毎度のことながら、久しぶりのブログ投稿となります。最近はずいぶんと涼しくなってきました。夜は少し寒いですし、昼間も暑いなあというような日もほぼなく、過ごしやすくなって、暑がりな私としてはとても助かります。もう少しすれば冬となるのでしょうか。今年の夏の暑さを考えると冬が来るのかどうかはなはだ疑問ではありますが。

さて、今回は所有者不明土地家屋管理制度について書きたいと思います。
この所有者不明土地家屋管理制度というのは、昨年、つまり令和5年4月から施行された民法改正によってできた制度です。この制度は、たとえばある土地または建物を、その所有者以外の人が利用したいと考えた場合、通常は、その所有者を探して交渉することとなるのですが、登記簿上の所有者やその真の所有者が所在不明な場合もあります。そうしたときに、地方裁判所にこの制度について申立てをおこない、所有者不明土地家屋管理人を選任してもらい、その管理人と利用などについての交渉をするというものです。

不動産の登記簿上の所有者あるいは真の所有者が所在不明な場合というのがあるのか?という疑問もあるかと思います。不動産の登記簿にはその不動産所有者の住所と氏名が記載してあるのですが、何らかの方法でその方の住民票や戸籍を取得しようとしたときに、該当の住民票または戸籍がないという場合があります。そんなことがあるのかという気もしますが、古い時代、明治時代や大正時代からまったく登記がされていないような場合には、その住所、氏名で戸籍等を請求しても該当なしということが稀に起こります。こういう時は、この所有者不明土地家屋管理制度が利用できます。また、その不動産の登記簿上の所有者が亡くなった後にその相続人全員(配偶者、子、親、兄弟姉妹のすべてです)が相続放棄した場合は、その不動産の所有者がいない事になり、やはりこの制度が利用できます。なお、同居の親族以外の住民票や戸籍を取得することは、その人との利害関係などの正当な理由がない限りできませんので、その点は注意してください。

このようにして所有者不明土地家屋管理人が選任されると、その管理人との間で土地や家屋の賃貸借契約などの利用権や、場合によってはその不動産を売却することが可能となります。

実は、これと似た制度がずっと以前からあって、それが不在者財産管理人と相続財産清算人(以前は「相続財産管理人」と言っていました)です。ただ、この両者はその人(所在が分からない人や相続人がいない人)のすべての財産を管理・清算するための制度なので、管理人や清算人の負担がかなり大きく、そのためにこれらの制度を申立てる人が、管理人や清算人のために事前に裁判所に納めないといけないお金(予納金と言い、最終的に不在者財産管理人や相続財産清算人の報酬となります)がかなり高額となります。

そこで、そうした所在が不明な人や相続人のいない人名義の特定の不動産のみを管理するために、所有者不明土地管理制度ができたのです。不動産はそれなりに大きな資産となる場合があるため定められたのでしょう。

この制度をどういうときに利用するか考えてみると、所有者の不明または、いない不動産を賃貸やその他の利用権を設けるためであるよりも、その不動産を買い受けたいことを理由とする場合が多いように私は思います。ただ、そのように所在が不明な人や相続人のいない人名義の不動産を買いたいという理由で、この所有者不明土地管理制度を利用するには少しハードルが高いように思います。

私自身、この制度はその不動産を買い受けたい、あるいは自分の名義としたいと考える人が利用する人が多いだろうなと最初考えていたのですが、今回、この所有者不明土地家屋管理人の申立てを依頼され手続きをおこなったところ、とても大変であることが分かりました。

それは何故なのか?それについては次回のブログで書きたいと思います。

続きをお楽しみに。

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