戸籍を見ればその人が分かる

こんにちは。山口市中河原町の司法書士山本崇です。沖縄から東海地方にかけて次々と梅雨入りが発表され、山口県もいよいよ梅雨入り間近となりました。今年の梅雨は大きな災害もなく明けてくれるとありがたいのですが。

さて、司法書士さくらばたけ事務所では現在法務省からの受託業務である長期間相続登記未了問題解消の事業をおこなっています。これは平成30年度から始まったあらたな事業です。東日本大震災で甚大な被害を受けた東北地方では街ごと高台に移転したする例がありますが、こうした事業をおこなうにあたっては移転先の土地の名義を新所有者にしなければならないわけですが、多くの移転先は山林であったりするため土地自体にそれほど資産価値がなく元の所有者が相続登記をおこなっておらず長期間登記名義が放置されたままであることが多いのです。しかし、新所有者に名義を移すにあたっては元の名義人についてきちんと相続登記をおこない現在の所有者(多くの場合元の所有者の相続人)に名義を移しておかなければなりません。しかし、最後に登記がされたのが明治時代であったり昭和初期であったりして現在の所有者に名義を移すのが困難で、そのため街の高台移転などが滞る例が多くみられました。こうした事態を事前に避けるため、最後の登記がされてから一定期間経過している土地について登記簿上の所有者について戸籍調査をおこない相続人を洗い出す事業を国としておこなっているのです。すべての相続人が確定したら、相続人の方に相続登記を促すための文書を送ることになっています。この事業の戸籍調査の部分を全国の司法書士がおこなっており、当事務所もその事業に参加しているわけです。

戸籍調査自体は相続登記をする際に必須の事となりますので、司法書士としての本来業務であり私も古い戸籍を読み解くのは割と慣れているのですが、一度に大量の戸籍を読んでいかないといけませんので、かなり骨の折れる仕事であるのは確かです。最後の登記がされたのが明治時代であったりすると登記簿上の名義人の相続人の数が50人を超えてくる場合も少なからずあります。そうしたときに法定相続人を一人として漏らすことなく調べ上げるのは大変な困難を要します。そうした事をしながらそれとは別の業務もこなしていかなければなりませんから一人ではなかなか難しく、当事務所の事務員さんにも残業してもらって助けてもらってます。事務員さんは以前ブログにも書きましたが、昨年10月に採用したばかりで、それまで司法書士事務所とは無縁の生活をしておりましたので、他人の戸籍を見るなんてことはまずありえず、最初にこの事業のお手伝いをお願いしたころは古い戸籍の読み方が分らず苦労していました。でも、この半年くらいでかなり力をつけ、今では戸籍調査は朝飯前となっているようです(たぶんですけど)。

その事務員さんに今回の事業の感想を聞いてみたのですが、他人の戸籍を見ていると、その人とまったく関わりがないにも関わらず、戸籍を通してその人となりがうかがえて非常に興味深いと言っておりました。たしかに戸籍というのはその人の歴史そのもので、いつ生まれ、結婚し、子どもを持ち、年老いて亡くなるという事がすべて書いてあるのですごく興味深いのです。ある人は結婚しお子さんを10人近く持ったりしましたが、そのうちの半分近くのお子さんが3歳になる前に亡くなっていたりと多くの不幸を背負っておいでなんだなと感じたりします。私が印象的であったのは、ある男性の戸籍で、その方は奥さんと幼いお子さん(たしか5歳未満だったと思います)をお2人同じ日に亡くしていました。戸籍には死亡した年月日の他に場所も記載してあるのですが、その奥さんとお子さん方は昭和20年2月某日に台湾で亡くなられておりました。調べてみるとその日台湾では大変な激戦があったようで、少々感傷的な気持ちになりました。

こうした赤の他人の戸籍を一度に大量に見ることができるこの事業はなかなか興味深いものがあります。これからも積極的に参加して、少しでも相続登記の促進に寄与していきたいと思うところであります。

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