こんにちは。山口市中河原町の司法書士さくらばたけ事務所の司法書士山本崇です。

今回は、外国籍から帰化された方が亡くなった際の相続手続について書きたいと思います。
約2か月くらい前に、とある金融機関の担当者様から、相続の手続きについてご相談を受けました。詳しくお話を聞いてみると、今回亡くなられた方は元々日本で生まれて、日本で育ったのですが、
生まれた際の国籍は大韓民国であったとのことです。その後、日本国籍に帰化され、最近亡くなったので、その相続人である配偶者の方(依頼者さん)が預金口座の解約にその金融機関を訪れたそうです。しかし、被相続人さんの帰化以後の戸籍謄本は全部揃っているのですが、帰化する以前の韓国の戸籍が手に入らない。これでは相続人が確定できないので、なんとかならないかとのことでした。

結論から言うと、このご依頼はなんとか解決できたのですが、100点満点のやり方ではありませんでした。100点満点のやり方というのは、亡くなった被相続人の帰化以前の韓国での戸籍を取得した上で、相続手続きをするという方法です。ですが、これができない!なぜかというと、韓国籍のときの被相続人の本籍地が、どうしても分からないからです。

まず、韓国の戸籍を取得するため、福岡の韓国総領事館に連絡を取ったのですが、戸籍を発行することは可能だけど、被相続人の氏名、生年月日、韓国での本籍地、戸籍の筆頭者(当時の戸主)が必ず必要と言われました。この方が、日本国籍に帰化して最初に作られた日本での戸籍謄本には、氏名、生年月日、両親の氏名は載っていましたが、韓国での本籍地が記載されていませんでした。帰化後の日本での戸籍には元の国籍のときの本籍地は記載されない取扱いのようです。

この被相続人さんが法務省の出入国管理局に帰化申請の書類を提出するときに韓国の本籍地を記載しているはずと考えて、次に、法務省に連絡を取ってみました。しかし、帰化申請の書類は国立公文書館に保管してあるとのこと。そこで、公文書館に連絡をしたところ、それらの書類はあるにはあるが、本人以外は閲覧、謄写できないとの回答。ご本人さんはもう他界されているんですけどね。相続人であっても、閲覧、謄写ができるという法令上の根拠がないのでできませんと言われてしまいました。ただ、法務省の民事局で、これらの書類を行政利用として閲覧する必要があると考える場合は、閲覧等ができますよと言われ、再度、法務省に連絡。確かに行政利用であれば閲覧等できると思うが、今回のケースでは行政利用等には当たらないといわれてしまいました。

最後に、知り合いの弁護士に、こういう案件の解決方法を知らないか問い合わせたところ、自分は詳しくないので、大韓民国民団の方を紹介するから問い合わせてみてはどうかと言われ、民団の方に連絡を取りました。民団のデータベースを調べてもらえたのですが、今回の被相続人さんの名前は無かったらしく、結局本籍地は分からずじまい。これで韓国での戸籍を取得しての相続手続きはできないことになりました。

その事情を金融機関の方に報告したところ、今回の調査報告書と相続人さんの念書(御社には迷惑かけませんといった文言があるもの)を提出すればなんとか預金口座の解約に応じることができますとのこと。依頼者さんにもそのあたりについて一通り説明して、なんとかイレギュラーな形での解決となりました。

しかし、帰化した方が亡くなった場合の相続手続きがこれほど大変だとは思いませんでした。今回はまだ、不動産の相続登記をする必要がなかったので良かったのですが、相続登記が必要だった場合、法務局が、調査報告書や念書で対応してくれるかどうかはなはだ疑問です。