こんにちは。山口市中河原町の司法書士さくらばたけ事務所の司法書士山本崇です。

今回は嘱託登記についてちょっと書いてみます。通常、私たち司法書士は一般個人あるいは金融機関からの依頼を受けて登記申請を行います。しかし、ごくまれにではありますが、山口県や山口市などの行政主体から依頼を受けて登記を行うこともあります。不動産登記では登記権利者と登記義務者という利害関係の相対立する両者が同時に申請人となり登記申請をおこなうのですが、これら登記申請人は通常の場合一般個人であったり、金融機関などの私法人であったりします。しかし、山口県や山口市などの行政主体から依頼を受けると申請人は行政機関そのものとなります。このように行政機関あるいは行政主体が登記権利者あるいは登記義務者となる登記の事を嘱託登記と言います。嘱託登記においては通常の私人あるいは私法人のみが申請人となる登記とは少し違った扱いが取られます。まず、嘱託登記においては、行政主体は印鑑証明書を提出する必要がありません。何しろ相手は山口市や山口県などの行政ですからそもそも印鑑登録制度自体がないのです。ですので、印鑑証明書を山口市が発行したり、地元の法務局で交付を受けるということはありません。また、行政主体名義の権利証あるいは登記識別情報も必要ありません。行政主体が自身の所有している不動産について、実は所有していなかったりと間違った認識を持っているという事は考えられませんし、行政主体自身が不動産所有者に成りすますという事もあり得ませんから、権利証等も不要ということなのでしょう。しかし、行政主体が自己所有の不動産を売ったり、抵当を付けたり、地役権をつけるにあたって、その意思確認は必要となりますので、この点については登記の代理人となる司法書士が行政主体の意思をきちんと確認します。しかし当事者の意思確認については法務局の審査項目ではありませんので、行政主体の意思確認を法務局に明らかにする必要はありません。

こうした行政機関等が申請人となる嘱託登記と通常の登記を同時に申請できるのか?ということについて以前疑問に思ったことがあります。例えば、先日依頼されたのが、行政機関が所有者となっている土地についている抵当権の抹消です。抵当権の抹消については土地所有者の行政機関が投機権利者、抹消される抵当権の抵当権者が投機義務者となりますが、この抵当権の抵当権者は一般個人であり、すでに亡くなっていることが分かりました。ですから、抵当権を抹消する前提として、相続による抵当権移転登記が必要になります。通常の登記申請の抵当権移転と行政機関が申請人になる抵当権抹消の嘱託登記を連件でおこなうことができるのかが私には分かりませんでした。そこで知り合いの司法書士の先生に問い合わせたところ、以前やったことがあるが法務局からクレームが来たという回答でした。まあ、連件でできないのなら、あらかじめ相続による抵当権移転を申請し、その後連件とせずに抵当権抹消の嘱託登記をすればいいだけなのですが。ただ、それだとやや面倒なので、一応法務局にも確認してみました。そうすると特に嘱託と通常の登記申請を連件でおこなうことは制限されていないとのことで、無事連件申請し、登記完了しました。

ちなみに、抵当権抹消の嘱託登記については行政機関の委任状が必要ですが、私人である登記義務者の委任状は必要ありません。その代わり登記をすることについて登記義務者の承諾書とその承諾書に押印した印鑑についての印鑑証明書が必要です。そのほかに登記義務者が押印した登記原因証明情報も必要ですが、これは承諾書と兼ねることができ、その場合は「登記原因証明情報兼承諾書」などの頭書きとなります。登記原因証明情報には登記義務者の実印の押印は必要ありませんが、承諾書を兼ねる場合は実印で押印する必要がありますね。嘱託登記の依頼は、かなり頻度の少ないものなので、たまに依頼を受けるといろいろと下準備が必要になり、気を使います。あと嘱託登記をするときは行政機関と業務委託契約を結ぶことが多く、私も過去にやった嘱託登記では、すべて業務委託契約を結びました。