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公示催告による休眠抵当権抹消
こんにちは。山口市の市役所近くで司法書士をしているさくらばたけ事務所の山本崇です。今年のゴールデンウィークはあまり天気が良くなかったですね。曇りだったり雨が降ったりと。こういうご時世ですから、あちこち出かけるなということでしょうか。私は家族で遠くに出かけることはしませんでしたが、仕事の資料を取りに周防大島に行ってきました。ここはかつて祖父母が住んでおり、今は二人とも他界していますが祖父母の自宅があり仕事で使う資料を置かせてもらっています。たまたまとても天気のいい日だったこともありとても車が多かったです。
ところで、このブログも開始からかなり時間が経っていますが、ずっと以前に休眠抵当権についての記事を書き込んだ記憶があります。確認してみると 2017年9月7日でした。休眠抵当権を抹消する方法として裁判所で公示催告の手続きを執ることができると書きました。確かにこの方法はあるのですが、実際は公示催告の手続きを経て休眠抵当権を抹消するということはほとんどないようです。これにはいろいろ理由があるようで、まず時間がかかるということ。手続き開始から半年はかかります。また、官報公告をする必要があるためその費用がかかる(それぞれの手続きによって費用は異なりますが2万円から3万円程度かかるようです)というのもネックになっているようです。ただ、この手続きが利用しづらい一番の理由は、公示催告の申立てにおいて、抹消する休眠担保権が消滅していることを証明する必要があるからと言われています。休眠抵当権の元となった抵当権の債権が弁済等によって消滅していることを証明する必要があるのですが、何しろ、大正時代や昭和初期の抵当権がほとんどですから、借入金の弁済証書や債権者名義の領収書などを見つけ出すとことはほぼ不可能でしょう。なかには明治時代に設定された抵当権すらありますし。
ただ、私が休眠抵当権の抹消手続きをする際にバイブルのように参考にしている『休眠担保権に関する登記手続と法律実務』という本には次のように書いてあります。少々長いのですが引用しますと、「そもそも休眠抵当権の抹消を考慮すると、かなり昔の担保権であり消滅時効により消滅しているはずという理由が考えられる。▼それを理由にして、公示催告を申し立てることが可能ではないかという点が実務上、大きな問題になるはずである。▼消滅時効による消滅を決定するためには、時効を援用することが不可欠になる。休眠担保権そのものの調査の段階では、現実には、時効の援用ができていないのが通常であるので、公示催告の申立上で時効の援用もできないかがポイントである。▼これについて、実際に多くの方が裁判所に相談にも行かれたみたいであるが、結論としては、公示催告上で時効の援用を兼用することはできないということである。よって、援用していない時効による消滅を理由に公示催告を申し立てることは無理ということになる。▼そもそも援用していない状態では、消滅していることが証明できないので公示催告は利用できないということになる。」
ただ、今回私が手続きを行った休眠抵当権についてはどうしても不動産登記法第70条第3項後段の供託手続きをとることができなかったので、地元の簡易裁判所で公示催告の手続きを取りました。手続きを進めるにあたり裁判所でいろいろともめたのですが、何とか公示催告の申立てが認められました。これは、どうしても供託手続きでの休眠抵当権抹消が無理だという場合に、公示催告を執る道が開かれたこととなるため、私としてはかなり大きな進歩だと思っています。
ただ、4月末に官報公告がされ、債権者(主には抵当権者)からの異議申し出期間が8月末までとなっていますのでやはり時間がかかるのは間違いないです。ご自身の土地を早めに売却したいと考えていらっしゃる方は、古い抵当権がついてないか普段からよく気を付けて登記簿等を確認しておいてください。