最近、家族信託が流行っているわけ

こんにちは。山口市中河原町の司法書士さくらばたけ事務所の司法書士山本崇です。

みなさんは「家族信託」あるいは「民事信託」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。当事務所では、現在この家族信託(あるいは民事信託。以下では家族信託で統一します。)に力を入れていますが、当事務所に限らず、弁護士、司法書士、税理士など法律関連士業の間では、家族信託がちょっとしたブームになっています。

これには大まかに言って、次の二つの事が関係していると私は考えています。一つは、平成18年に信託法が改正されたことによって、信託というものが一般個人の方にとって非常に扱いやすい制度となったこと。そして、もう一つは、現在の日本において高齢社会が進んでいること。今回はこのうち、二つ目の高齢社会の進展と家族信託の関係について考えてみたいと思います。

日本人は昔から貯金や預金が大好きな国民でした。それは今でもおそらく変わらないと思います。現在の日本人の預金総額は、1000兆円を超えていると言われていますが、この1000兆円の預金の半分以上は65歳の高齢者によるものです。この事だけを見ても、日本の高齢者はお金持ちであると言えます。しかし、そのお金持ちの高齢者も年を重ねるごとに、認知症などに罹患する可能性が高くなります。資産をたくさん持っている高齢者が認知症などにかかって、判断能力を失った場合、原則としてその方の資産(預金や不動産、有価証券など)はいっさいいじることができません。判断能力がないということは、その人だけで契約をすることができなくなるということですから、たとえば預金よりも確実に利益を得られるような投資方法があったとしても、それをするための契約ができません。認知症高齢者の資産は、すべて塩漬けにしておくしかないのです。また、認知症の方を介護施設に入居させようとした場合、介護施設との間での契約は、高齢者のご家族ができるかも知れませんが、必要な介護費用を高齢者がお持ちの預金口座から引き出すことはできません(実際には普通預金であれば家族の方が引き出すのは可能なようですが、定期預金の解約などはほぼ不可能です)。

高齢者などが認知症などによって判断能力を失ったときのために、日本では成年後見という制度が用意されています。これは、判断能力を失った人に対して、家庭裁判所が審判で成年後見人等を付け、その成年後見人等に高齢者などの財産管理や身上監護を行ってもらうというものです。成年後見制度自体は、判断能力を失った人の資産を守ってくれるもので、それなりに優れた制度ではあるのですが、原則として認知症高齢者等の資産をがっちりと守ることが主眼となっているため、成年後見人が、認知症高齢者の資産を使って株式投資や不動産投資などを行うことはできませんし、認知症高齢者の親族が経済的に困窮していたとしても、援助をすることはできません。成年後見制度のもとでは認知症高齢者の資産を有効に活用することが非常に困難となっています。

そこで、こうした不都合を回避するために家族信託に熱い視線が向けられているのです。家族信託は一つの契約であるので、高齢者の方が正常な判断能力を持っているときに家族信託契約を結んでおかなければなりませんが、それさえクリアしてしまえば、株式投資、不動産投資、親族への経済援助などができるのです。高齢者の方が多くの資産を持っていても、それらが銀行で眠っているだけの成年後見制度と比べると、はるかに優れた制度であると言えます。しかし、家族信託というのは非常に複雑な制度で、一般の方ではなかなか理解が難しいものです。そこで私たちのような法律専門家が間に入って、家族信託を利用したいと考えている方々の力になっているわけです。

ご家族の中に高齢な方がいらっしゃって将来のことについて不安を抱えておられるようでしたら、家族信託を考えてみてはいかがでしょうか。その場合には、当事務所が全面的にバックアップいたします。

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